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最高裁判所第一小法廷 昭和46年(ク)52号 決定

抗告人

川崎勉

代理人

矢野伊吉

相手方

古茂田ノブ

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人矢野伊吉の特別抗告理由第一点について。

所論は、要するに、原審が、男子である抗告人と女子である相手方に対し、その性別の故に異なつた取扱いをしたとして、原決定を憲法二四条に違反するというのであるが、記録ならびに原決定精査しても、原審がそのような差別をしたことについては、これを認めるに足りる資料はない。したがつて、所論はその前提を欠くことが明らかであり、論旨は、ひつきよう、違憲に名をかりて、原審の認定判断に関して単なる法令違背を主張するに帰し、採用することができない。

同第二ないし第四点について。

家事審判法九条一項乙類七号に規定する親権者の変更の審判は、民法八一九条六項を承けて、家庭裁判所が、子の利益のため必要があると認める場合に、子の家族の請求により、親権者を父母のうち他の一方に変更する旨の裁判をなすものであり、家庭裁判所は、当事者の意思に拘束されることなく、子の福祉のため、後見的立場から、合目的的に裁量権を行使するものであつて、その審判の性質は本質的に非訟事件の裁判であるがら、公開の法廷における対審および判決によつてする必要はない。このことは、当裁判所の累次の大法廷決定の趣旨に照して明らかである(昭和三六年(ク)第四一九号同四〇年六月三〇日大法廷決定、民集一九巻四号一〇八九頁、昭和三七年(ク)第二四三号同四〇年六月三〇日大法廷決定、民集同号一一一四頁、昭和三九年(ク)第一一四号同四一年三月二日大法廷法定、民集二〇巻三号三六〇頁参照)。したがつて、公開の法廷における口頭弁論に基づかないでなされた原決定に憲法三二条、八二条違反の遠法はない。論旨は、これと異なる独自の見解に立脚して原決定を非難するに帰し、採用することができない。

よつて、民訴法八九条を適用して、主文のとおり決定する。(大隅健一郎 藤林益三 下田武三 岸盛一)

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